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東京地方裁判所 平成11年(ワ)15764号 判決

原告 諏佐肇

右訴訟代理人弁護士 藤森茂一

同 小林哲也

被告 株式会社ダイコ

右代表者代表取締役 大関秀晴

右訴訟代理人弁護士 深山麻美子

同 上野格

主文

一  被告は、原告に対し、金一八一二万二六六〇円及びこれに対する平成一一年二月二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその他の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを一〇分し、その九を被告の負担とし、その他を原告の負担とする。

四  この判決の第一項は、仮に執行することができる。

事実

第一原告の求めた裁判

一  被告は、原告に対し、金二〇〇〇万円並びにこれに対する平成一〇年三月三日から同年五月二九日まで年二厘の割合による金員及びこれに対する同年五月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

三  仮執行宣言

第二当事者の主張

一  原告の請求原因

1  原告は、平成一〇年三月三日に、被告(ただし、平成一〇年一二月一二日の組織変更前の「有限会社ダイコー住宅センター」。以下においては、特に区別の必要がない限り、組織変更の前後を問わず単に「被告」という。)に対し二〇〇〇万円を次の約定で貸し付けた(以下この契約を「本件消費貸借契約」という。)。

弁済期 平成一〇年五月二九日

利息 年二厘

2  よって、原告は、被告に対し、右消費貸借契約に基づき、元金二〇〇〇万円と、これに対する平成一〇年三月三日から同年五月二九日までの年二厘の割合による約定利息及びこれに対する同年五月三〇日以降支払済みまでの民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する被告の認否

1  請求原因1の事実は否認する。

2  原告と消費貸借契約を締結し、二〇〇〇万円の交付を受けたのは、甲一の金銭消費貸借契約書に「連帯保証人(丙)」として記載されている渡邉洋一である。このように、実際には原告と渡邉との間で消費貸借契約が締結され、渡邉が貸金を受領し、その元本、利息及び六〇〇万円を渡邉が原告に弁済することになっていた。しかし、渡邉が事業に失敗し、行方不明となった結果、原告は渡邉から貸金を回収できなくなり、被告に対し本件訴訟を提起したのである。

3  仮に、原告が本件消費貸借契約を締結しようとした相手方が被告であったとしても、被告は原告から金二〇〇〇万円の交付を受けていないから、本件消費貸借契約は成立していない。

三  被告の抗弁

1  通謀虚偽表示

(一) 仮に本件消費貸借契約が成立したものとしても、同契約は、真実は原告と渡邉との間で締結されたものを、原告と被告との間で締結されたように仮装したものである。

(二) 原告は、本件消費貸借契約当時、右の仮装行為を知っていた。

(三) よって、本件消費貸借契約は通謀虚偽表示によるものであるから、無効である。

2  弁済

被告は原告に対し、本件消費貸借契約に基づく債務(以下同契約に基づく貸金を「本件貸金」、同債務を「本件貸金債務」という。)について次のとおり合計四五〇万円の元本又は利息を弁済した。

(一) 平成一〇年四月六日  二〇万円

(二)     四月二八日  二〇万円

(三)     五月一九日 一五〇万円

(四)     六月一一日  一〇万円

(五)    一一月一三日 一〇〇万円

(六)    一二月二八日 一〇〇万円

(七) 平成一一年二月一日  五〇万円

四  抗弁に対する原告の認否

1  抗弁1の事実は否認する。

2  抗弁2のうち、被告から原告にその主張の日に主張の金員が支払われたことは認めるが、この支払が本件貸金債権に対する弁済としてされたことは否認する。

被告のいう合計四五〇万円は、本件貸金に対する謝礼金として支払われたものであり、本件貸金債務の返済としてされたものではない。

第三証拠

証拠に関する事項は、本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  本件消費貸借契約の成否

1  証拠(甲一から三、六、七、九の1、2、乙四、原告、被告代表者)によれば、次の事実を認めることができる。

(一)  原告は、平成九年九月ころ、不動産や金融のブローカーをしていた佐藤清と知り合った。大関秀晴は佐藤の甥で、被告(当時は、ダイコー住宅センター)の代表取締役であった。鵜沢完次は、大関のスポンサー的な立場で大関と仕事を一緒にしていた。渡邉洋一は不動産ブローカーで、大関は鵜沢を通じて渡邉と知り合い、原告は、平成一〇年二月下旬ころ大関を通じて渡邉と知り合った。

(二)  原告は、平成七年七月三〇日に、東京都目黒区鷹番一丁目八〇番二〇所在の自宅(借地権付建物)を九八七二万円余で売却し、資金を有していた。

(三)  平成一〇年二月下旬ころ、大関は佐藤や渡邉と共に、原告に対し、大地主である鵜沢の土地に現在産業廃棄物処分場を作る計画を進めており、もうすぐ役所の許可が出るが、資金が不足しているので短期間でいいから二〇〇〇万円を貸してほしいなどと述べて原告に二〇〇〇万円の借入れを申し込んだ。原告がこれを渋ったところ、大関は、原告に対し、処分場が始まれば莫大な利益が出るから、謝礼金として七〇〇万円を支払うなどと述べて二〇〇〇万円の貸付けを強く求めた。そこで最終的に原告は、二〇〇〇万円を被告に貸し付けることに同意した。

(四)  原告、大関、佐藤及び渡邉は、平成一〇年三月三日、東京都千代田区神田小川町の佐藤の事務所に集まり、貸付けの手続を行った。大関は、原告を貸主、被告(ダイコー住宅センター)を借主、佐藤、渡邉及び鵜沢を連帯保証人とする金銭消費貸借契約書(甲一)をあらかじめ用意し、当日、原告が貸主欄に署名捺印し、借主欄には大関が被告の代表者として記名(「千葉県東金市東岩崎二丁目一六番地一四 有限会社ダイコー住宅センター 代表取締役大関秀晴」)捺印した。佐藤及び渡邉も、同契約書の連帯保証人欄にそれぞれ署名捺印した(なお、鵜沢については、あらかじめ連帯保証人欄に鵜沢の住所氏名が手書で記載されていた。)。

その際、被告は原告に対し謝礼金七〇〇万円を支払う旨約し、その旨の念書(甲六)を原告に差し入れた。この念書には、「諏佐肇(原告)と(有)ダイコー住宅センター(被告)代表大関秀晴との別紙金銭消費貸借契約金弐千万円における金利年弐厘としてあるが謝礼金として金七百万円を支払い領収書は受け取らないものとする。」と記載されていた(以下この謝礼金の合意を「本件謝礼金合意」という。)。

原告は、当日現金二〇〇〇万円を被告代表者の大関に交付した。

また大関は、その後間もなく、本件貸金債務の担保とする趣旨で、千葉県鎌ヶ谷市北中沢二丁目所在の被告所有の土地の権利証を原告に交付した。

(五)  原告は、弁済期後本件訴訟提起前に、被告に対して、内容証明郵便などで三、四回本件貸金の返還を請求した。これに対して、被告は、原告に「本件消費貸借契約の主債務者は渡邉である」といった反論をしたことはなかった。

2  右1の認定事実によれば、原告は、大関から、被告が鵜沢らと計画している産業廃棄物処分場事業のための資金として二〇〇〇万円を貸すよう求められて最終的には承諾し、原告及び被告は、被告があらかじめ被告を借主として作成した金銭消費貸借契約書にそれぞれ署名(記名)捺印して甲一の消費貸借契約証書を作成し、また被告は、同契約を前提として謝礼金七〇〇万円を支払う旨の念書を当日原告に交付しているのであるから、本件消費貸借契約の借主は被告であったと認めるのが相当である。

よって、平成一〇年三月三日に原告と被告との間で本件消費貸借契約が成立したものと認められる。

3  なお、被告は、本件消費貸借契約における借主は渡邉で、被告は名前を貸しただけである旨主張しており、被告代表者大関もこれに沿う供述をしている。そして、乙一(佐藤の陳述書)もこれに沿う証拠である。

しかし、証拠(原告、被告代表者)及び弁論の全趣旨によれば、原告と渡邉とはもともと面識はなく、平成一〇年二月下旬に大関に紹介されてから本件消費貸借契約締結までにほんの二、三回しか顔を合わせていないこと、原告は渡邉が具体的にどのような仕事をしているか等についてほとんど知らなかったことが認められる。したがって、原告がこのような渡邉に対し二〇〇〇万円もの大金を貸し付けることは、容易には考えられないところ、この点に、前記1の認定事実及び前記2の説示を併せると、原告は、貸し付ける金員が大関のいう産業廃棄物処分場事業のために使用されるものと考え被告に対し二〇〇〇万円を貸し付けたものと優に認めることができる。被告代表者は、本件の二〇〇〇万円が、渡邉が当時手がけていた京都の寺院の買収交渉に使用されたなどと供述しているが、本件の事実経過に照らすと、仮にそのような事実があったとしても、そのような資金使途は借主及び連帯保証人側の内部事情に過ぎず、原告との法律関係に影響を及ぼすものではないというべきである。右被告代表者の供述及び乙一は、借主に関する前示の判断を左右しない。

また、被告は、自らの主張を裏付ける証拠として乙二(渡邉の被告、鵜沢、佐藤に対する念書)を提出し援用している。しかし、同証が真正に成立したものと認められるとしても、その内容は、結局は本件の貸金についての返済責任が渡邉にあることを被告、鵜沢及び佐藤に対し表明するものに過ぎず、これらの者らの間の内部関係を律するものに過ぎないというほかはない。

4  次に、被告は、被告は二〇〇〇万円の交付を受けていないから本件消費貸借契約は成立していないと主張する。しかし、前記1の認定事実に照らすと、被告が原告から二〇〇〇万円の交付を受けたとすべきことは明らかであり、本件消費貸借契約は有効に成立しているというべきである。被告の右主張は理由がない。

二  通謀虚偽表示の成否(抗弁1)

前記一1の認定事実によれば、本件消費貸借契約締結の際、被告に自らを借主として二〇〇〇万円を借り受ける意思があったことは明らかであり、本件消費貸借契約は有効に成立しているものと認められる。

よって、虚偽表示に関する被告の主張は理由がない。

三  弁済の有無(抗弁2)

1  被告が、原告に対し、被告主張のとおり七回にわたり合計四五〇万円を支払ったことは、当事者間に争いがない。そして、証拠(甲五、九の1、2、原告)によれば、右の四五〇万円は、本件謝礼金合意に基づき謝礼金として原告に支払われたものであったと認めるのが相当である。乙四及び被告代表者の供述中のこの認定に反する部分は、前記の各証拠に照らして採用することができない。

2  被告は、この各支払が、本件貸金債務に対する弁済として扱われるべきであると主張するので、以下この点について検討する。

(一)  本件謝礼金合意の文言によれば、これによる謝礼金は実質二〇〇〇万円の本件貸金の利息の趣旨をも含むものであった可能性があるが、その点はさておくとしても、利息制限法三条の規定に照らすと、右謝礼金は、本件消費貸借契約に関し債権者である原告の受ける元本以外の金銭であり、契約の締結及び債務の弁済の費用ではないから、同条により利息とみなされるべきものである。そして、右の謝礼金七〇〇万円は、貸付日である平成一〇年三月三日から弁済期日である同年五月二九日までの八六日間に対応するものであるところ、同金額の元本に対する比率を年率に換算すると、次の計算式のとおり一四八・五パーセントとなる。

(計算式)七〇〇万円÷八六×三六五÷二〇〇〇万円=一・四八五

右の換算された利率は、制限利率年一五パーセントをはるかに超えるものであるから、本件謝礼金合意に従って弁済された金員のうち、年一五パーセントの制限利率による金員を超える部分は、利息の支払としては無効であり、超過部分の支払は元本の支払に充てられたものというべきである。

(二)  ところで、平成一〇年六月一一日以降の支払は弁済期経過後のものであるから、未払利息に対する充当分以外は弁済期の翌日以降の遅延損害金に充当されるべきである。しかし、本件においては遅延損害金に関する利率の特約はないから、遅延損害金についても年一五パーセントの利率で計算すべきである。

(三)  右(一)、(二)の前提の下に充当計算をすると、別紙充当関係計算表のとおり、平成一一年二月一日現在の残元本額は一八一二万二六六〇円となる。

四  結語

以上によれば、原告の本訴請求は、一八一二万二六六〇円とこれに対する平成一一年二月二日以降の年五分の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、これを認容し、その他は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判官 岩田好二)

別紙<省略>

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